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2008年 01月 22日

教科書

スタンフォード大学が、日・中・韓・米・台の高校歴史教科書を比較!
論点スペシャル 日米中韓台 歴史教科書比較
(読売新聞 2008/12/16)  

戦争賛美せず 愛国心あおらず 日本は最も抑制

 先の大戦に対する各国の歴史認識問題が、アジアの国際関係に影を落とし続けている。米スタンフォード大学アジア太平洋研究センターは、日中韓と米国、台湾の高校歴史教科書比較研究プロジェクトを実施し、日本の教科書は戦争を賛美せず、最も抑制的だと指摘した。研究チームの主要メンバーである日本史学者ピーター・ドウス氏に研究成果を、元米紙東京特派員ダニエル・スナイダー氏に研究の趣旨を報告してもらった。論点スペシャルとして紹介する。

ピーター・ドウス氏
 スタンフォード大名誉教授。専門は日本近代史。ハーバード大で歴史学博士。英国帝国史研究で進展した「非公式帝国」論などを導入、戦前日本の帝国史・植民地統治研究に貢献した。早稲田大などで数えたこともある。

暗黙の教訓

 日本の高校歴史教科書は過去30年間、海外のマスコミで悪評を買ってきた。太平洋戦争の開戦に対する日本の責任や、日本軍が占領地にもたらした苦難に教科書が十分な注意を払っていないという批判があり、教科書の内容がますます愛国主義的になっていると主張する人々もいる。

 スタンフォード大学アジア太平洋研究センターの「分断された記憶と和解」研究は、こうした批判が間違っていることを明らかにした。日本の教科書は愛国主義的であるどころか、愛国心をあおることが最も少ないように思われる。戦争をたたえることがなく、軍隊の重要性を強調せず、戦場での英雄的行為を語らない。物語的な叙述をほとんど省いた出来事の年代記となっている。

 日本の教科書が示しているのは、暗黙の教訓だ。それは、軍国主義の拡張は愚かなことであり、戦争は市民に甚大な犠牲を押しつけるものであると諮る。日本の歴史教科書の戦争記述は、戦後日本が外交政策の手段として軍事力の保持を拒んでいることと完全に歩調を合わせている。

 日本の学習指導要領は、近隣諸国との友好的で協力的な関係の発展、アジアと世界の平和と安定の必要性を強調している。

奇妙な結果

 対照的に、ほかの東アジア諸国の大半は自国史の教科指針で、歴史教育の基本的役割として民族の自尊心と国民のアイデンティティー(帰属意識)の増進を主張している。

 民族の自尊心を強調することは、時に奇妙な結果を生む。例えば、韓国の教科書は、1937年に中国で勃発した戦争や真珠湾攻撃、広島と長崎への原爆投下など他国の教科書が取り上げている戦時中の主要な出来事に言及していない。代わりに、日本の植民地統治に対する朝鮮 じんの抵抗運動や文学における文化的発展にもっぱら焦点を当てている。言い換えれば、解放に向けた民族闘争の継続が韓国の教科書の物語の筋である。


自国中心の記述

 最も愛国主義的に戦争を描写しているのは、おそらく中国の教科書だ。英雄的な軍事作戦の記述に満ちているうえ、最終的に日本を敗北させたのは中国、とりわけ中国共産党だったと示唆している。

 太平洋での戦争や同盟国の果たした役割はほとんど言及されていない。原爆投下が戦争終結に果たした役割は強調されず、日本軍に対する毛沢東の総攻撃要求とソ連の対日参戦が決定的要因とされている。

 中国と台湾の教科書は、抗日戦争の勝利が、中国の権利と利益を無視した帝国主義勢力による1世紀の恥辱をすすいだと書く。中国の教科書はまた、戦後も米国を新たな敵として反帝国主義闘争が続いたと強調する。新中国は、東アジアの”進歩勢力”を追い出そうとする米国を阻んだ、朝鮮戦争の勝者として描かれる。

 奇妙なことだが、米国の教科書にも戦勝に酔ったような叙述がある。米国で最も広く使われている教科書「アメリカン・ページェント」は、米国が世界的大国へと成熟するうえで戦争が決定的な転換点になったと善いている。

 戦前、米国の人々は外の世界から逃避し、現実を直視しない孤立主義に閉じこもっていた。だが、真珠湾攻撃によって、国際的な無政府状態の中で安全な国はなく、孤立主義でいられる可能性はないことに気づいた。米国人は孤立主義や宥和政策の危険性を悟り、反民主主義陣営との戦いに責任をもって自らの力を使うべきだと結論付けた。

 米国の教科書は、中国ほど露骨に愛国主義的な言葉を使っていない。だが、中国の教科書が共産党の勝利を支持するのと同じように自国の冷戦政策を支持している。

 「アメリカン・ページェント」の戦争描写は、トルーマン大統領とアチソン国務長官からニクソン大統領とキッシンジャー国務長官まで、リペラルにも保守にも受け入れられるように書かれているのだ。そして、米国の大衆文化と非常に似ていることだが、第2次大戦を”いい戦争”とたたえている。


平和教育の徹底

 日本の教科書の戦争記述が愛国的情熱に欠けるからといって、驚くべきではない。結局のところ、日本は戦争に負けたのだ。戦争を祝うような叙述の余地は限られている。日本国民の大多数にとり、戦争は戦った男たちにも銃後の家族にも悲しみを与えたものとして記憶されている。

 日本の教科書が戦争描写を抑制していることは、「平和教育」という考えが日本で真剣に受け止められていることの反映でもある。戦争が日本人に与えた教訓は、軍事力の行使は道義的に正しくはなく、賢明でもないということだった。戦争で、中国の恥辱の世紀と米国の孤立主義は終わったかもしれないが、国の誇りは軍事力によってしか保たれないという日本人の幻想も終わったのである。


ダニエル・スナイダー氏
 スタンフォード大アジア太平洋研究センター研究副主幹。クリスチャン・サイエンス・モニタ一紙の東京特派員、インド特派員、モスクワ支局長を歴任。専門は北東アジア地域研究、米国のアジア外交。

各国、自国史の教育を優先

 3年間におよぶ「分断された記憶と和解」研究は、戦時中のアジアにおける歴史の記憶が、いかに形成されるかを理解するために行われた。歴史認識の問題は、この地域の国際関係を混乱させ続けている。和解が必要だと恩っても、歴史の記憶が分断され、しばしば衝突するために、長い歴史論争が解決されないと、我々は考える。

 研究の第1段階は、日本、中国、韓国、台湾、米国の高校歴史教科書を読むことで、歴史の記憶を形成するうえで教育が果たす役割に焦点を当てた。各国・地域で最も広く使われている世界史と自国史を翻訳した後、今年初めにスタンフォード大学で歴史家と教科書執筆者を集めた国際会議を開き、その分析、比較を行った。

 各国・地域の教育制度は世界史より自国史に優先権を置いている。その結果、過去に対する見方は限定的なものとなっている。研究のウェブサイトは、http://aparc.stanford.edu/research/divided_memories_and_reconciliation/

by fuji_ssss | 2008-01-22 23:47 | korea


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